「もう今の職場には戻りたくない」
「復職しても、また同じことになりそう」
「いっそ退職して、新しい職場を探した方がいいのではないか」
休職して少し時間が経つと、このような考えが浮かんでくることがあります。
その一方で、
「今辞めて後悔しないだろうか」
「次の仕事が見つからなかったらどうしよう」
「一度は復職してから考えた方がいいのではないか」
と、不安になることもあるでしょう。
戻りたくない。でも、辞めるのも怖い。
二つの気持ちの間を行ったり来たりしながら、なかなか結論を出せない方も少なくありません。
では、休職中に退職を決めてもよいのでしょうか。
私は、必ずしも「復職してから考えなければならない」とは思いません。
一方で、苦しいときほど「復職か退職か」という二択だけで考え続けてしまうことがあります。
そんなときには、結論を急ぐよりも、「なぜ辞めたいのか」「これからどのように働きたいのか」を少しずつ整理していくことが大切です。
まず、「何から離れたいのか」を考えてみる
「仕事を辞めたい」と思ったとき、その気持ちをもう少し細かく見てみましょう。
あなたが離れたいのは、本当に「会社」そのものでしょうか。
たとえば、
- 仕事量が多すぎた。
- 上司との関係がつらかった。
- 今の部署の仕事が合わなかった。
- 長時間労働が続いていた。
- 責任を抱えすぎていた。
- 周囲に相談できなかった。
さまざまな可能性があります。
「会社を辞めたい」という一つの言葉の中に、いくつもの苦しさが含まれていることがあります。
ここを整理しないまま退職すると、次の職場を選ぶときにも「今の職場ではないところ」ということだけが基準になってしまうかもしれません。
反対に、
「自分は何がつらかったのか」
が分かってくると、
「次はどんな環境なら働き続けられそうか」
も少しずつ見えてきます。
退職は「何かに向かう選択」か、「何かから離れる選択」か
もう一つ考えてみてほしいことがあります。
退職したあと、あなたは何をしたいでしょうか。
- 以前から挑戦したかった仕事がある。
- 専門性をもっと活かしたい。
- キャリアアップしたい。
- 生活を大切にできる働き方に変えたい。
こうしたものがあるなら、退職は単に現在の職場から離れるだけでなく、自分が望む方向へ進むための選択でもあります。
一方で、
「とにかく、この会社から離れたい」
という気持ちが大部分を占めていることもあります。
もちろん、これは悪いことではありません。
自分を苦しめ続けている環境から離れることが必要な場合もあります。
ただ、そこで考えてみたいのが、
「離れたあと、どこへ向かいたいのか」
ということです。
たとえば、
「上司から離れたい」
という思いがあるとします。
そこで終わらせず、
「上司との関係の何が苦しかったのだろう」
と考えてみる。
「いつも評価されているようで怖かった」
「困っていても相談できなかった」
「仕事を断ることができなかった」
ということが見えてくるかもしれません。
そうすると、次の職場で大切にしたいものとして、
「困ったときに相談できる関係」
「仕事について話し合える上司」
「自分のキャパシティを伝えられる働き方」
などが見えてきます。
「嫌だったこと」は、これから大切にしたいことを教えてくれる材料にもなります。
退職を決める前に、会社とコミュニケーションをとってきたでしょうか
ここでもう一つ、振り返ってみてほしいことがあります。
自分が困っていることや、変えてほしいことを、これまで会社にどのくらい伝えてきたでしょうか。
- 仕事量を減らしてほしい。
- 業務内容を調整してほしい。
- 異動について相談したい。
- 上司との関係に困っている。
- 復職後の働き方について配慮してほしい。
こうした希望があっても、
「迷惑をかけたくない」
「これくらい自分で何とかしなければ」
「そんなことを言ったら評価が下がる」
と考え、限界まで伝えずに働いてしまう方もいます。
すると本人の中では、
「もう退職するしかない」
というところまで追い詰められていても、会社側には、本人がそこまで困っていたことが十分伝わっていないことがあります。
もちろん、何でも会社に相談すれば解決するわけではありません。
相談しても変わらないこともありますし、そもそも安心して相談できる職場ではないこともあります。
それも重要な情報です。
だからこそ退職を決める前に、
「何が変われば、この会社でも働ける可能性があるだろう」
と一度考えてみてもよいでしょう。
そして可能であれば、それを会社と話し合ってみる。
会社が対応できることが分かれば、復職という選択肢の見え方が変わるかもしれません。
反対に、
「それは会社として対応できません」
と分かれば、それもまた、退職や転職を考えるための大切な判断材料になります。
「会社の問題」と「自分の働き方」の両方を振り返る
休職の原因をすべて自分の問題にする必要はありません。
過剰な業務量、ハラスメント、長時間労働、不十分なマネジメントなど、環境を変える必要がある場合もあります。
一方で、
「人に頼るのが苦手だった」
「仕事を断れなかった」
「期待されると、それ以上に頑張ってしまった」
「つらくても大丈夫と言ってしまった」
といった、自分なりのパターンが休職に影響していることもあります。
これは「あなたにも原因がある」という話ではありません。
むしろ、次の職場でも自分を守るために知っておきたい、自分自身の取扱説明書のようなものです。
会社を変えることで解決すること。
自分の働き方を変えることで解決すること。
その両方を分けて考えてみることが、再び同じ苦しさを繰り返さないための手がかりになります。
「今、決めなければならないのか」も考えてみる
そして最後に確認したいのが、
本当に今、結論を出す必要があるのか
ということです。
休職中には、
「早く今後を決めなければ」
「何も決まっていない状態が怖い」
という焦りが生まれることがあります。
しかし、「決められない」という状態には理由があるのかもしれません。
- まだ十分に体調が回復していない。
- 会社との話し合いができていない。
- 自分が何を大切にしたいのか分からない。
- 退職後の生活について情報が足りない。
そうであれば、必要なのは無理に決断することではなく、決めるための材料を増やすことかもしれません。
「正しい選択」より、「自分で選べる状態」を取り戻す
復職するのか。
退職するのか。
あるいは転職するのか。
どの選択が正しいのかは、人によって異なります。
だからこそ、「正解を当てよう」とするよりも、
私は何から離れたいのか。
何が変われば働けそうなのか。
会社に伝えられていないことはないか。
これからの働き方で何を大切にしたいのか。
と、一つずつ整理してみてください。
その結果、
「やっぱりこの会社では難しい」
という結論になることもあるでしょう。
反対に、
「以前と同じ働き方でなければ、もう一度戻ってみてもいいかもしれない」
と思うこともあるかもしれません。
大切なのは、復職することそのものでも、退職することそのものでもありません。
その選択の先で、自分が無理なく働き続けられること。
休職期間は、元の自分に戻るためだけではなく、これからの働き方を見直す時間にもできるのではないでしょうか。