再休職・再発予防

再休職を、
繰り返している方へ。 うつからの復職と、再発予防のこと。

2026年7月19日 / sasafune カウンセリングルーム

うつからの回復と再発予防

「また休んでしまった」と、
自分を責めているあなたへ

この文章は、
再休職を経験された方へ向けて、
書いています。

「また休んでしまった。」
その言葉だけで、
胸が苦しくなる方も、
少なくないと思います。
だから今日は、
「頑張ってください」と
励ましたいわけではありません。
少しだけ肩の力を抜いて、
いまのあなたにも知っておいていただきたいことを、
静かに書いてみようと思います。

もし今、
ご自分を責める気持ちが強いようでしたら、
その気持ちを、
無理になくそうとしなくても大丈夫です。
ほんの少しだけ横に置いて、
この先を読んでいただけたら、
嬉しく思います。

「また」という言葉の重さ

再休職を経験された方とお会いしていると、
多くの方が「また」という二文字を、
とても重たそうに口にされます。

「また迷惑をかけてしまった。」
「また同じことを繰り返してしまった。」
「もう自分は働けないのではないか。」

その二文字には、
申し訳なさ、悔しさ、不安、自分への失望。
さまざまな思いが詰まっています。

一度目は、
「仕方がなかった」と思えても、
二度、三度となると、
「自分が弱いからではないか」と
考えてしまう方は少なくありません。

けれど、
私たちがお会いしてきた多くの方は、
決して立ち止まりたかったわけではありません。
元の職場へ戻ろうと努力された方もいます。
新しい環境で働こうとされた方もいます。
まだ働くことは難しくても、
「もう一度、自分らしい暮らしを取り戻したい」と、
一歩ずつ回復を続けてこられた方もいます。

その中で、
少しずつ無理が積み重なり、
もう一度立ち止まることになった。
そういう経過であることのほうが、
私たちの臨床では、
ずっと多く感じられます。

だから私たちは、
「また休職した」という結果だけではなく、
そこに至るまで、
その方がどれだけ前を向こうとしてきたのか、
という過程を大切にしています。

あなただけに起きていることではありません

ここで、少しだけ、
数字のお話をさせてください。
数字だけで、
人の苦しさは測れません。
それでも、
「自分だけではない」と知ることが、
心を少し軽くしてくれることがあります。

うつ病などで休職し、
一度復職された方のうち、
およそ三割が、
一年以内に再び休職に至るという報告があります。
さらに、数年という単位で見ると、
その割合はさらに高くなり、
二度目の休職は、
一度目より長くなりやすいことも知られています。

この数字は、
「よくあることだから大丈夫」
という意味ではありません。
一人ひとりの苦しさは、
数字では表せないからです。
ただ、
「自分だけがおかしいのではないか」と
感じている方に、
「そうではないかもしれません」と
お伝えしたいのです。

繰り返すことは、
決して珍しいことではありません。
そして、それは必ずしも、
「弱さ」を意味するものでもありません。

なぜ、繰り返してしまうのでしょうか

「もっと頑張ればよかった。」
「気持ちが弱かった。」
そんなふうに考えてしまう方は、
少なくありません。
けれど、その考えだけで終わってしまうと、
本当に見直せるものが、
見えなくなってしまいます。

私たちが現場で感じるのは、
再休職の背景には、
その方の努力不足というより、
「戻り方」の難しさがある、
ということです。

復職した直後は、
周囲も気にかけてくれることが多いでしょう。
しかし、時間が経つにつれて、
職場は少しずつ日常へ戻っていきます。
一方で、ご本人の心や体は、
まだ回復の途中にあることも、
少なくありません。
この時間のずれは、
誰かが悪いから起きるものではなく、
とても自然に起こりやすいものです。

また、休職のきっかけも、
一つの出来事だけで説明できることは、
多くありません。
最後の出来事だけが印象に残りますが、
その前には、
小さな疲れや我慢、無理が、
静かに積み重なっています。

だからこそ、
「何が悪かったのか」を探すより、
「どのように積み重なってきたのか」を振り返ることが、
再発予防につながります。

変えられないことと、変えられること

過去の出来事そのものは、
変えられません。
けれど、そのあとも続いている心の働きには、
あとから手をつけることができます。

その一つが、
「反すう」と呼ばれるものです。
うまくいかなかった出来事を、
何度も思い返す。
これから起こるかもしれない失敗を、
何度も想像する。
答えを探しているつもりなのに、
気づけば心だけが疲れてしまう。
そんな経験はないでしょうか。

これは、
性格や意志の弱さではありません。
苦しいときほど、
心は何とか答えを見つけようと働きます。
反すうは、
その必死な働きでもあります。
ただ、それが長く続くと、
回復をゆっくりにしてしまうことも、
分かっています。

だから大切なのは、
「考えないようにする」ことではありません。
「ああ、今、自分は反すうの中にいるんだな」と気づき、
少しずつ距離を取る練習を、
していくことです。

再発予防とは、
「もっと頑張ること」ではなく、
自分の心との付き合い方を、
学んでいくことでもあります。

場所を変えれば、解決するのでしょうか

ここで、
多くの方が一度は考えることに、
触れておきます。
「転職したほうがいいのではないか。」
その思いが浮かぶことは、
とても自然なことです。

実際に、
転職が回復につながる方もいます。
一方で、一般的には、
元の職場への復職(現職復帰)が、
基本的な選択肢とされています。
その理由は、
仕事内容や環境をすでに知っていることに加え、
短時間勤務や業務調整など、
回復に合わせて少しずつ働き方を戻せることが、
多いからです。

回復の途中にある方にとって、
この「少しずつ戻れる」ということは、
とても大きな支えになります。
だから、
元の職場へ戻ること自体が、
悪い選択というわけではありません。

ただ、一つだけ大切なことがあります。
前回と同じ準備で、
前回と同じ働き方で、
前回と同じ期待を背負って戻るとしたら、
再び苦しくなってしまうことがあります。
問題なのは、
「同じ職場」であることではありません。
「戻り方」が以前と同じになってしまうことなのです。

一方、転職にも、
その方なりの意味があります。
ただ、新しい職場では、
慣らし勤務のような期間が、
設けられていないことも少なくありません。
新しい仕事、新しい人間関係、新しい環境が、
一度に始まります。
さらに、
「頑張りすぎてしまう」
「頼ることが苦手」
「限界まで我慢してしまう」といった、
自分自身のパターンは、
場所が変わっても繰り返されることがあります。

だから大切なのは、
「復職か、転職か」という二択だけで、
考えることではありません。
どのように働き続けていくか。
その視点を持つことが、
再発予防につながるのだと思います。

焦って答えを出さなくても大丈夫です。
今は、
自分に合った戻り方を、
少しずつ考えていく時期なのかもしれません。

何度目かだからこそ、見えてくるもの

できることなら、
こんな経験は一度もしたくなかった。
そう思うのは、
とても自然なことです。
それでも、
繰り返したからこそ見えてくるものがあります。

どんなときに無理をしやすいのか。
どんな場面で助けを求めにくくなるのか。
どんなサインが出始めると危ないのか。
一度目には見えなかった自分の輪郭が、
少しずつ見えてくることがあります。

再発予防とは、
「二度と休まない」と自分を追い込むことではありません。
自分の崩れ方を知り、
自分らしい戻り方を作っていくことです。
その積み重ねは、
これから先の人生を支える、
大切な財産になっていくかもしれません。

知っておくと、少し安心できること

休職をためらう理由として、
お金のことを挙げられる方も、
少なくありません。
会社の健康保険に加入している方であれば、
病気で仕事を休み、
給与が支払われない期間には、
傷病手当金を利用できる場合があります。

また、二〇二二年からは制度が見直され、
一度復職した期間は支給期間に含めず、
通算一年六か月まで、
受け取れる仕組みになりました。
つまり、
一度復職したあとに再び休職したからといって、
その期間がそのまま失われるわけではありません。
制度もまた、
繰り返す方を支えられるよう、
少しずつ変わってきています。

もちろん、
詳しい条件は、
加入している健康保険などによって異なりますので、
会社や健康保険組合などへ、
確認してみてください。

金継ぎのこと

割れた器を、
金でつないで直す手当てを、
金継ぎといいます。
割れた跡を消すのではなく、
その跡を抱えたまま、
もう一度使えるようにしていきます。

ただ、
「傷があるから価値がある」と、
言いたいわけではありません。
できることなら、
こんな経験はしたくなかった。
そう思うのも、
ごく自然なことです。

それでも、
消すことのできない時間だからこそ、
そこから何を持っていくかは、
あとから選ぶことができます。
傷を誇る必要もありません。
急いで前向きになる必要もありません。

ただ、
この経験を通して、
自分を少しだけ大切にできるようになった。
そんな日が、
いつか訪れるかもしれません。

おわりに

笹の葉でつくった舟は、
どこへ着くかを、
急いでは決めません。
流れの速い日もあります。
向かい風の日もあります。
岸辺で少し休む日があってもいい。
またゆっくり流れ始める日が、
あってもいい。
人生も、
少し似ているのかもしれません。

戻るのか。
離れるのか。
働き方そのものを変えるのか。
その答えは、
焦って決めるものではなく、
心と体が少しずつ整っていく中で、
見えてくることもあります。

もし、
一人では少し考えきれないと感じることがあれば。
笹舟は、
答えを急ぐ場所ではなく、
その方の歩幅で、
一緒に考える場所でありたいと思っています。

あなたが安心して立ち止まれる時間が、
次の一歩につながっていくことを、
願っています。

この文章は、
複数の方との関わりから見えてきたことを
一般化して書いています。
特定の方の相談内容にもとづくものではありません。
また、体調やお薬に関わることは、
主治医にご相談ください。
笹森 千佳歩 公認心理師・臨床心理士

カウンセラーについて