不安・感情のあつかい方

考えすぎて、頭から離れない。 「反すう思考」が止まらないときにできること

sasafune カウンセリングルーム

仕事から帰ってきたのに、頭の中ではまだ仕事をしている。

食事をしていても、お風呂に入っていても。布団に入って目を閉じると、むしろ昼間より鮮明に思い出してしまう。

考えているのだから、そのうち答えが出そうな気もします。けれど、30分考えても、1時間考えても、なぜか同じところに戻ってくる。むしろ考えれば考えるほど、不安になったり、自分を責めたりしてしまう。そんな経験はないでしょうか。

心理学では、つらかった出来事や自分の感情、その原因や意味について繰り返し考え続けることを、「反すう(rumination)」と呼びます。「ぐるぐる思考」などと呼ばれることもあります。

ただ、この記事でお伝えしたいのは、「考えすぎるのをやめましょう」ということではありません。考えることは、大切な力です。ただ、ときどき私たちは、「考えている」と「考え続けている」の境目が分からなくなることがあります。今日は、その境目について考えてみたいと思います。

「考える」と「考え続ける」は、少し違う

たとえば、仕事でミスをしたとします。「あのミスはなぜ起きたんだろう」と考える。確認不足だったことに気づいて、「次は提出前にチェックしよう」となれば、考えたことで一つ先に進んでいます。

ところが、

「あのミスはなぜ起きたんだろう」
↓
「前にも同じようなことがあった」
↓
「どうして自分はいつもこうなんだろう」
↓
「そもそも仕事に向いていないのかもしれない」
↓
「これからもずっとこうだったら……」

と進んでいくことがあります。たくさん考えたはずなのに、最初より問題が大きくなっています。そして最後には、「どうして自分はこんなこともできないんだろう」と、出来事ではなく「自分自身」の問題になっている。これが、反すうの一つの特徴です。

反すうは、単なる「考えすぎ」ではありません

近年の心理学では、反すうだけでなく「心配(worry)」なども含めて、反復性ネガティブ思考(Repetitive Negative Thinking:RNT)という枠組みでも研究されています。

こうした思考のあり方は、うつや不安など特定の一つの問題だけではなく、さまざまな心理的問題に共通するプロセスとして研究されています。

つまり、「自分は考えすぎる性格だから」だけで片づける必要はありません。反すうは心理学的にも研究されてきた、心の働きの一つです。

なぜ、考えているのに答えが出ないのか

ここで面白い研究があります。反すう研究を長く行ってきたEdward Watkinsらは、何を考えるかだけではなく、「どのように考えるか」も重要なのではないかと考えました。

たとえば、

という問い。こうした問いを繰り返していると、だんだん問題が大きく、抽象的になっていきます。

一方、

という問いは、私たちを具体的な出来事や行動へ戻してくれます。

研究から分かっていること

うつ病患者と非うつ病者を対象とした実験では、抽象的な自己注目よりも、具体的な自己注目を促した方が社会的問題解決が改善しました。

出典:Watkins & Moulds (2005), Emotion

つまり、考えることをやめる必要はありません。ときには、考え方のモードを変えてみる。それが一つの方法になります。

「考えないようにしよう」とすると、余計に考えてしまうこともある

では、反すうに気づいたら、「もう考えるのをやめよう」と思えばよいのでしょうか。これも、そう単純ではありません。

心理学では以前から、特定のことを意図的に考えないようにする「思考抑制」について研究されています。

研究を統合したメタ解析では、思考を抑えようとしたあとに、かえってその思考が浮かびやすくなる「リバウンド効果」が確認されています。ただし、その大きさは条件によって異なります。

たとえば、「仕事のことを考えちゃダメ」「失敗を思い出しちゃダメ」と頭の中から追い出そうとする。でも、「ちゃんと考えないようにできているかな」と確認するためには、結局そのことを思い出さなくてはいけません。

だから、無理に追い出そうとしなくてもいい。「あ、また考えているな」くらいに気づく。それだけでも、考えとの距離は少し変わります。

反すうしている自分を、さらに責めなくていい

そして、もう一つ。「また考えすぎている」と気づいたとき、「こんなことを考えても意味がない」「早く切り替えなきゃ」「自分は気にしすぎなんだ」と、反すうしている自分をさらに責めてしまうことがあります。

でも、少し違う見方もできます。何度も思い出してしまうのは、失敗を繰り返したくないからかもしれない。ちゃんと理解したいからかもしれない。これからどうしたらいいのか、答えを見つけたいからかもしれない。

つまり反すうの奥には、「なんとかしたい」という気持ちが隠れていることがあります。

「また考えてしまった」ではなく、
「私は今、何をなんとかしようとしているんだろう?」
と尋ねることができます。

ここから、少し景色が変わります。

ぐるぐるし始めたら、3つだけ

反すうへの対処法は、たくさん紹介されています。でも、反すうして疲れているときに、「対処法を7つ覚えましょう」と言われても、それ自体が少し大変です。なので、この記事では3つだけにします。

①「何について考えている?」と小さくする

「仕事のこと」ではなく、「今日、上司に言われた一言が引っかかっている」くらいまで小さくします。「自分の人生について」ではなく、「今の職場に戻ることが怖い」まで小さくする。問題が具体的になると、扱える大きさになることがあります。

②「今、できることはある?」と聞いてみる

たとえば、「今日のメール、失礼じゃなかったかな」と何度も考えているなら、「明日の朝、一度読み返す」と決める。「仕事を続けられるか不安」なら、「今週、業務量について上司に相談する」と決める。次にすることが一つ決まったら、そこで考える役割はいったん終わりです。

③ 今はできないなら、「今日はここまで」

これが一番大切かもしれません。今夜考えても答えが出ないことがあります。

未来のことを、今日の自分だけで完全に解決することはできません。そんなときは、紙やスマートフォンに書いて、「これは明日考える」としてみる。問題から逃げるのではありません。「今日はここまで考えた」と区切る。それも、問題との付き合い方です。

反すうは、変えていけるのか

「こんなに考えてしまうのは、自分の性格だから仕方ない」と思っている方もいるかもしれません。でも、反すうや心配などの反復性ネガティブ思考は、心理療法によって変化しうることが研究されています。

研究から分かっていること

2025年に発表されたメタ解析では、55件の研究・計4,970人を対象に、認知行動療法(CBT)が反すう・心配などの反復性ネガティブ思考に与える効果が検討されました。CBTは対照条件と比べて、全体として中程度の改善効果を示しました(Hedges' g = −0.67)。また、反復性ネガティブ思考そのものを直接標的とした介入は、より一般的なCBTよりも効果が大きい傾向がみられました。ただしこの部分の分類方法については研究者間で議論があり、今後さらに検証が重ねられていく見込みです。

出典:Stenzel et al. (2025), Psychological Medicine

ただし研究間のばらつきも大きいため、「この方法を使えば誰でも反すうがなくなる」という意味ではありません。それでも、この研究から大切なことが一つ分かります。

反すうは、「考えすぎる人だから仕方ない」という固定された性格ではなく、付き合い方を変えていける心理的プロセスの一つだということです。

「復職するか、辞めるか」が頭から離れないときにも

反すうは、大きな決断を抱えているときにも起こります。たとえば休職中に、「復職するべきか」「退職するべきか」「転職した方がいいのか」と考える。もちろん、どれも考える必要のある大切な問題です。

でも、「戻ってまた休職したらどうしよう」「でも辞めたら後悔するかもしれない」「転職しても同じことになったら」「そもそも自分は何がしたいんだろう」「こんなことも決められない自分は……」と、一度に全部を考え始めると、答えはかえって遠くなります。

そんなときは、

と分けてみる。人生の答えを、一晩ですべて出そうとしなくていいのです。

今夜、また考え始めてしまったら

この記事を読んだからといって、明日から反すうしなくなるわけではありません。また仕事のことを思い出すかもしれません。「あれでよかったのかな」と考える夜もあるでしょう。

そんなとき、「また反すうしている。ダメだ」と、新しい反省材料を増やさなくて大丈夫です。ただ、「あ、また同じところを回っているな」と気づいてみる。

そして、一つだけ自分に聞いてみてください。

この考えは、私を次の一歩に
連れていってくれているだろうか?

連れていってくれているなら、もう少し考えてみる。次にすることを、一つ決める。そうでないなら、今日はここまで。続きは、明日の自分に任せてもいい。

考える力をなくす必要はありません。必要なのは、ときどき、その力を休ませることなのかもしれません。頭の中に残っている問題を、全部片づけてから眠らなくても大丈夫です。今日のところは、ここまでで十分です。

sasafuneでは

一人で考えていると、どうしても同じ場所に戻ってきてしまうことがあります。sasafuneでは、

といったご相談もお受けしています。

無理に「考えないようにする」のではなく、

一緒に少しずつ整理していきます。

考えることをやめるためではなく、考える力を、自分を苦しめるためではなく、自分を助けるために使えるようにする。カウンセリングを、そんな時間として使うこともできます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。自分や他者を傷つけるおそれがあるなど、今すぐ安全を保つことが難しい場合は、119番や地域の救急医療機関へ連絡してください。緊急性はないものの「死にたい」「消えたい」という気持ちがある場合には、厚生労働省「まもろうよ こころ」で電話・SNSなどの相談先を確認できます。

参考文献

笹森 千佳歩 公認心理師・臨床心理士

カウンセラーについて